CAE

CAEの流体解析における境界条件について

僕は、よく流体解析の境界条件をどうしたら良いのか悩みます(笑)
むしろCAE解析の肝と言っていい「境界条件」!!

この記事で基本的な流体解析の境界条件を示そうと思います。

マッハ数\(M<1\)の亜音速

非圧縮性流体圧縮性流体の境界条件は基本的に同じと考えて良いです。

気を付けないといけないのは、マッハ数が1を超える超音速の流れの時です。

※非圧縮性流体では、流入流量(結局は速度)が与えられた場合、出口圧力を基準にして、上流に遡るにつれ、圧力が流路の圧損分だけ大きくなります。

非圧縮性流体

代表的な設定方法

流入条件:流速規定[m/s]、温度[K]

流出条件:圧力固定[Pa]

※温度変化も考慮する場合は「温度の輸送方程式」を追加

※圧力の相対変化が重要になり、絶対値が重要ではない。

流量規定や流速規定において、流入圧力を設定することはありません。

入口が流量規定や速度規定の場合は、入口圧力は「出口圧力」と「流路の圧損」から決まるものであり、境界条件として指定するものではありません

※流入圧力設定はなにか?
あまり正しい設定ではないが、流入密度を決めるときだけこの値が使います。

しかし、カット面等で見たときの圧力は、流路圧損による圧力分布が表示されているので、矛盾が生じます。

流入圧力は使用しない方が正しい解析となります。


流入圧力を指定しない場合、体積流量や流速指定では、入口の圧力から密度が決まるため、質量流量は状況に合わせて変化します。
流れの本質的なところは質量流量で決まるので、質量流量を設定したほうが解析は収束が良いです。

実際の状況として質量流量が既知の場合は、体積流量や流速に変換せずに質量流量を設定する方が良いです。


ちなみに・・・

非圧縮性流体として扱っている場合は、音速は無限大として扱われます。
その結果、圧力の情報は解析空間のあらゆる場所に、瞬時に伝達することになります。

また、非圧縮性流体ではいかなるときも流入流量=出口流量が保たれます。

これも、入口で流体が流入したという情報は出口に瞬時に伝わっているためである。


圧縮性流体

非圧縮性流体の時と同じです。

代表的な設定方法

流入条件:流速規定[m/s]、温度[K]

流出条件:圧力固定[Pa]

※圧力の絶対値が重要ではあるので正確な値を設定する必要があります。

例えば、既知のデータとして

  • 流入速度(体積流量)
  • 圧力
  • 温度

がある状況でも、圧力指定をする必要がないということになります。

あるいは、入口を圧力規定とする場合は、逆に流速(流量)のデータが不必要になります。
※非圧縮流体でも、流路の流量と、圧損を同時に指定することはできません。
片方を指定すると、もう片方は解析結果として得られる値になりますので、実測と合うかどうかは解析の精度に依ります。
※圧縮性流体解析では、流入圧力が密度に影響するので惑わされがちですが、圧縮性流体解析でもまったく同じであるということになります。

マッハ数\(M>1\)の超音速

圧縮性流体

流入条件として、\(u,v,w,P,T\)、流出条件としてはひとつもいらない。

圧力(密度伝播)は音速で伝わるため、マッハ数\(M>1\)以上の場所を遡ることあが出来ません。

この場合、出口から入口まで圧力の情報が遡っていくことができなくなるため、

入口の圧力が決まらないので、流量規定や流速規定においても流入圧力を明示的に設定する必要があります

まとめ

非圧縮性流体

基本的な変数:\(u,v,w,P\)

※温度変化も考慮する場合は「温度の輸送方程式」を追加

圧縮性流体

基本的な変数:\(u,v,w,P,\rho,T\)
※状態方程式で\(\rho=\Phi(P,T)\)とできるので、実際の変数は\(u,v,w,P,T\)の5変数

亜音速

流入条件として、\(u,v,w,P,T\)のうち4つ、流出条件として1つの変数

だいたい、速度の3変数を流入条件にして、流入条件を圧力にする場合が多いでしょうかね。

その他の亜音速の場合の設定方法
(1)質量流量と\(T\)を与える方法
質量流量の変わりに\((u,v,w)\)を規定することも可能ですが、質量流量の方が収束性等の点で好ましい結果が得られることが多いです。

(2)全温度, 全圧を指定する方法。
境界での\(P\)や流量が未知である場合に用いることができます。

例:流入口が大気開放である場合などによく用いられるます。

(3)\(P, T\)を規定する方法

流入してくる流体の\(P,T\)が既知で流速が未知という場合に適しています。

流出条件として、基本的に質量流量規定, 圧力規定の2つが考えられます。

流出口で逆流防止のため、圧力規定の代わりに全圧規定とする場合もあります。

※乱流解析の場合は、さらに変数として乱流エネルギー\(k\), 乱流消失率\(\epsilon\)を考慮する必要がありますが、これらの変数は流入口でその値を与えなければなりません。

↑圧縮性, 非圧縮性で扱いの違いはありません

超音速

流入条件として、\(u,v,w,P,T\)、流出条件としてはひとつもいらない。

ちなみに・・・

非圧縮性流体、圧縮性流体とわけて考えることが多いですが、別に両者は異なる性質があって明確に分けているわけではなく、「非圧縮性の流れとして扱った方がいいよ」、「流体の圧縮性を考慮して扱った方がいいよ」という程度の区別です。

実在している流体は全て圧縮性(密度変化)のある流体ですが、それを密度変化がないと仮定した場合には「非圧縮性流体」として扱っているということになります。

密度変化が何%以内なら非圧縮性として扱うかは自分で決めないといけないですね。

一般的によく言われているのが、「密度変化を5%以内」と考えた時に非圧縮性の流れとして扱います。
そのときのマッハ数は約0.3です。

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