製品開発をしていると熱に関する問題に出くわすことが多いですよね。
当ブログでは伝熱工学の基礎的内容を以下のシリーズに分けて解説を行います。
今回は熱伝導について図を用いながらわかりやすく解説をします。
以下の内容について解説を行います。
- フーリエの法則:温度差による熱移動の基礎的な法則
- 熱伝導方程式:温度分布の時間変化と空間変化の偏微分方程式
今回導くのはフーリエの法則です。
\dot{q}=-k\frac{dT}{dx}
\end{align*}
熱伝導率:$k[W/m K]$
前回の内容と被る部分もありますが、復習のつもりで読んでください。
- 工学系の学生
- 製造業に勤める技術者
- 技術士を目指している技術者
熱の伝わり方の基本
まずはじめに熱の伝わり方の基本を押さえましょう。
これは熱力学第二法則と呼ばれる法則に関係しています。
固体・液体・気体の物質において、人が手を加えなければ自然に起こりうるのは「温度の高い方から低い方へ熱が流れる」というものです。
これをイメージで分かるように書くと以下のようになります。
まるで坂道を転がるように熱移動が行われます。
この、高温から低温に坂道を転がるように熱移動が行われるのを数式表すと、
-\frac{T_{c}-T_{h}}{L}\tag{1}
\end{align*}
となります。
マイナスは傾き(勾配)が負になっているのことからきています。
温度差があることで熱移動が起こり最終的には温度が均一になって熱移動が行われなくなります。
※厳密には熱移動がおこなわれなくなるというのは語弊がありますが、ミクロな視点で見ると原子間の熱移動は行われていますが、伝熱工学や熱力学ではマクロな視点で熱移動が行われたかどうかを見ています。
熱伝導の仕組み
熱伝導の仕組みを絵を用いて解説します。
固体は温度が高い場合に振動エネルギーが大きくなり、隣の原子と相互作用しながら高温から低温側へ熱を伝播します。
これが熱伝導です。
金属の場合は自由電子が存在し、自由電子の運動エネルギーを低温側へ伝えることができるため金属の場合の熱伝導率は大きくなります。
水の入ったやかんの例では、やかんの鉄の部分の熱移動が熱伝導になります。
フーリエの法則
熱伝導に関係する式には、単位面積・単位時間当たりの熱移動と単位長さあたりの温度差を熱伝導率という比例係数で結んだフーリエの法則があります。
\dot{q}=-k\frac{dT}{dx}\tag{2}
\end{align*}
熱伝導率:$k[W/m K]$
フーリエの法則は単位時間当たりの熱量$\dot{Q}$は、単位長さ当たりの温度差$\frac{T_{c}-T_{h}}{L}$と面積$A$に比例するとして、$\dot{Q}=-kA\frac{T_{c}-T_{h}}{L}$より、
- 左辺:単位面積・単位時間あたりの熱量:$\frac{\dot{Q}}{A}=\dot{q}$
- 右辺:単位長さあたりの温度差:$-\frac{T{c}-T_{h}}{L}=-\frac{dT}{dx}$
が比例するという考えのもと導かれています。
温度差が熱移動が起こる
温度差によって熱移動が生じることがわかったところで、式を書く際にこんなことを思うときがあります。
このような疑問に答えるためには自分の中のルールを決めておく必要があります。
あくまで参考ですが、僕は以下のようにルールを作って式を立てています。
※熱伝導の式を例にしています。
最終的に熱量は$-\frac{T_{c}-T_{h}}{L}$で伝わることになります。
このとき、分子の符号によって矢印の向きが変わります。
- $T_{c}<T_{h}$であれば$-\frac{T_{c}-T_{h}}{L}>0$なので矢印の向きは図の通りになる。
- $T_{c}>T_{h}$であれば$-\frac{T_{c}-T_{h}}{L}<0$なので矢印の向きは図の向きと反対になる。
矢印の向きは熱の移動の方向を示すものなので、矢印の向きが反対であるということは熱移動の方向が図とは逆だったということになります。
このように決めたルールに従って立式して、$-\frac{T_{c}-T_{h}}{L}$の符号で矢印の向き(熱量の向き)が決まるということです。
まとめ
今回は温度の空間分布を知るためのフーリエの法則について解説をしました。
\dot{q}=-k\frac{dT}{dx}\tag{2}
\end{align*}
熱伝導率:$k[W/m K]$
熱伝導率:$k[W/m K]$は物性値なので物質によって変わる値です。
熱伝導率の大小によって熱の伝わり方が変わるので、熱伝導率は云わば物質の性格を表す量になります。
熱伝導率は物質によって変わりますが気体・液体・固体という状態によって大きさの目安は変わってきます。
注意すべき点は熱伝導率は一般的に温度によって変わるという温度依存性を持つということです。
シミュレーションするにあたって熱伝導率は物性値として既知な値として与えますが、扱っている問題において対象物の温度変化が大きい場合は熱伝導率の温度依存性を無視できなくなる点には注意すべきです。
次回は熱伝導方程式の導出について解説します。
熱伝導方程式は、温度の空間変化だけを考えるフーリエの法則とは違い、時間変化と空間変化を考えることができる方程式です。
おすすめ参考書
伝熱工学の基礎勉強のための参考書と演習問題を紹介します。