OpenFOAM

【回転するバスケットボールまわりの流れ(9)】dynamicMeshでバスケットボールの形状にフィット

こんにちは(@t_kun_kamakiri)(‘◇’)ゞ

前回の記事では球体周りの抗力係数を乱流域で再現できるかというのを検証しました。

結果はレイノルズ数:$Re=\frac{Ud}{\nu}=\frac{1.0*0.128}{1.5e-5}=8,533$(乱流状態)での抗力係数0.44に対して、OpenFOAMでの結果も文献を再現する数値Cd=0.45でした。

今回興味があるのは球体表面によって抗力係数が変わるのかということです。
こちらの記事であるように、ゴルフボールは表面に窪みがいっぱいある状態(ディンプル)によってこうレイノルズ数での抗力係数が極端に落ち込む(ドラッグクライシス現象)位置を低レイノルズ数側へがシフトすることができます。

滑らかなボール(赤線)とディンプルのあるゴルフボール(青線)の抗力係数分布を比較した折れ線グラフ.

過去に球体周りの抗力係数が文献通りになるか検証しましたが、このドラッグクライシス現象のような挙動は再現できませんでした。

ドラッグクライシスを再現するには球体周りで相当数のメッシュ生成を行い、非定常で乱流モデルはLESなどを使い渦の剥離点を正確に再現することが求められると思われます。しかし、自宅PCスペック程度の自分の計算環境では到底無理なので諦めました_(._.)_

興味があるのはゴルフボールなど球体表面に工夫をすることで抗力係数がどれだけ変わるかということです。ゴルフボールの先行研究は多くあるので、バスケットボールならどうか?ということでバスケットボール周りの抗力係数を出してみたいと思います。

以前の記事では球体周りとその外側の領域を別々で作成しました。

今回はinner部分をバスケットボール形状にフィットするように変形して作成するという方法を取ります。

今回の記事

バスケットボール形状にフィットするようにdynamicMeshを利用する

参考にした記事はこちらです。

バスケットボール形状

バスケットボール形状の形状はFreeCADで作成しました。
モデルの作成方法はこちらです。

実物のバスケットボールのサイズを調べる前に適当に作れるかどうかを試したものなので、作成したモデルはΦ400となっています。
後々調べるとバスケットボールは7号ボールでΦ250程度なので、Φ250になるようにstlをスケール変換します。

例えば以下のコマンドでスケール変換ができます。

これでΦ400からΦ250のバスケットボールの形状にスケール変換できました。

dynamicMeshチュートリアルのコピー

dynamicMeshの使い方はこちらの記事がとても参考になりました。
しかし、現在のOpenFOAMのバージョン(v2212)とは少々使い方が異なるので、別途調べる必要があります。

適当なチュートリアルを持ってきます。

innerのベースメッシュの変更

innerメッシュをouterメッシュをコピーしてきて以下のようにフォルダを分けておきます。

今回dynamicMeshでメッシュをバスケットボール形状にフィットさせるのはinnerのメッシュのみでouterは後ほどmergeするために同じフォルダに移しておきます。

バスケットボールの溝を再現するためにめしゃくちゃメッシュを細かくする必要がありました。

system/blockMeshDict

blockMeshを実行してできたメッシュがこちらです。

 

いちおうouterのメッシュの設定も載せおきます。

system/blockMeshDict

innerとouterを重ねるとこんな感じです。

dynamicMeshでinnerをバスケットボール形状にフィットさせる

先ほどコピーしたdynamicMesh用のチュートリアルを参考に001_innerを編集していきます。

0/pointDisplacement

basketball_m1.stlは「constant/triSurface」に保存してあるバスケットボール形状のモデルです。速度「velocity (1e-3 1e-3 1e-3);」でバスケットボール形状にprojection(投影)する形でメッシュが変形していく設定です。
constant/dynamicMeshDict

inverseDistanceは境界面「ball」と一緒に動く設定です。
距離に応じで自然とメッシュがついてくるようにまわりのメッシュが変形してくれます。

「constant/controlDict」も必要に応じて変更します。

constant/controlDict

設定が終わったら以下のコマンドでmoveDynamicMeshを実行します。

メッシュ数が多いので計算時間は少しかかります。
変形速度が速すぎたり、計算時間が長いと変形しすぎてしまうので、速度は微調整して適当にいい感じでメッシュ変形できたところで計算をストップして使えば良いかなと思います。

001_innerと002_outerのメッシュを結合すればバスケットボール形状の周りの流体の解析領域のメッシュが完成します。

おまけ

バスケットボール形状でのシミュレーションも行って抗力係数を出してみました。
無回転での解析ですが結果は球体の抗力係数とたいして変わらないという結果でした。

適当に作ったので流体領域はもう少しこだわった方が良さそうです。
具体的には、

  • 流入側の領域は無駄に広いのでもう少し狭くする
  • 流出側ももう少し解析領域を広くする

メッシュ数が多く(1000万程度)今回はテスト計算しかしていないので、暇があればトライしたいと思います_(._.)_
また、今回は渦が放出する非定常の現象を定常解析(simpleFoam)で行いましたので、厳密な実現象の再現にはなっていないかもしれません。

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本記事ではESI版のOpenFOAMを使っているため本書のFoundation版で対応していない部分がありますが、その辺を考慮しても持っていて損はないでしょう。

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