流体力学をいちから学ぼうとしたときに、流体力学の内容で悩むよりもむしろそこで使われる数学で悩む人の方が多いのではないでしょうか。
では、流体力学を学ぶにあたって知っておかなければならない数学の知識というのはどういったものなのかを紹介したいと思います。
- 流体力学を学びはじめて挫折しそうな学生
- これから流体力学を学ぶ社会人流体力学を学ぶにあたって必要になる数学の知識を示しておきたいと思います。
数学の知識なんてなくても流体力学は理解できるよ・・・・と、そう言いたい人がいるかもしれませんが、それはとても表面上の理解の話であって、必ず数学と向き合わなくてはいけません。
しかし、いわゆる数学科のように数学を専門とした数学知識は必要なく物理現象を理解するためのツールとして数学は必要になります。
そんなツールでつまづいてしまっては困るし、何よりいちから勉強しようとすると「一体何を勉強すれば良いのか」がわからないのではもっと困ります。
そこで、これくらいは知っておいた方が流体力学を勉強するうえで差支えないかという数学の分野を選んでみました。
A内容(絶対知っていた方が良い内容)
これは絶対勉強しておかないと流体力学を勉強するのに支障がでますよっていうものを並べてみました。
【A内容】
知識 | 用途 |
微分・全微分・偏微分 | ナビエストークス方程式 その他流体の基礎式 座標変換 |
テーラー展開 | 数値計算 場の偏微分 |
ベクトル解析 ナブラ演算子、grad、div、rot |
ナビエストークス方程式 その他流体の基礎式、渦度方程式 |
座標変換 ※楕円の面積と楕円体の体積の求め方 |
数値計算(有限要素法) 極座標表示 |
積分 | 有限体積法 ベルヌーイの定理 |
流体力学の勉強をするにあたってはここまででだいたい大丈夫です。
表の内容を上から順番に学んでいけば良いでしょう。
これらの数学の内容をある程度(苦手意識無く)の学習が済んでいれば流体力学の教科書はすんなり読み進められるはずです。
さらに学んでおくとよいものは、B内容としてあげています。
B内容(知っておくと役に立つ内容)
知っておくと役に立つというのは、本格的に流体力学と向き合うのであれば知っておいた方が良いものを並べました。
というのも・・・・
流体力学のナビエストークス方程式には一般解が見つかっていないため、方程式をフルで解こうと思うと必ず数値計算が必要になります。
数値計算をするという段階になると、微分を離散化しているので精度は必ず落ちます。
落ちるんですが、それをどうにかして精度良く解くための数値的解法を学ぼうと思うと以下の内容が必要になってくると思います。
その記述があまりにも煩雑になるので、それをきれいに整理ために「テンソルや行列」を使うと思っています。
【B内容】
知識 | 用途 |
テンソル | ナビエストークス方程式のテンソル表記、粘性応力 |
行列 |
数値計算の行列ソルバ |
スペクトル法、乱流のコルモゴロフ測 | |
複素解析 | 2次元ポテンシャル流れ |
何をもとにして流体力学に必要な数学を選択したか
A内容・B内容を見て・・・・・・・
ほとんどの数学の分野が必要じゃないかって・・・・なっています(笑)
この必要な知識はどうやって決めたかと言いますと、「計算力学技術者試験の熱流体2級」の第1章の問題に出題している内容を拾ってきただけです。(ただ、必要な知識は確かにこれだけで十分だと思います)
計算力学の資格受験の体験談は↓こちらです。
ここでの流体力学を学ぶにあたって必要な数学という意味は「流体力学の標準的な教科書なら自力で読めるだけの数学の知識」という意味です。
はじめて流体力学を学んだ時の気持ち
流体力学を勉強し始めたのが、大学2回生の時です。
当時は、流体力学は高校では扱うことがない古典力学のひとつの学問なので、とてもワクワクした気持ちでいました。
それが流体力学の講義が進んでいくにつれて全然よくわからなくて、撃沈しました(笑)
ただ板書をノートに写すだけという、ほとんど指先の筋トレに耐え、テストの点を取るためだけの時間を過ごしました。
あの、はじめて習う学問に対するワクワク感は一体どこへやら・・・・・・・わけもわからず「ベルヌーイの定理」を覚えていた記憶があります。
流体力学は、学問の発展としては物理内では興味が薄いのか、やり尽くされているという認識なのか、それほど深く講義をしてくれません。
半期でサクッと終えてもう2度と大学の授業で習うことがありませんでした。
そんなこんな当時の事情は色々ありますが、やっぱり流体力学がどうしても理解したいのと、大学院での研究に必要な分野であったので、ほぼ独学で流体力学をはじめから学んだという気がします。
そして今思えばどうして大学の講義で流体力学を理解できなかったのか・・・・・・そのことを思い出して記事を書きたいと思います。
今思えば、とてもシンプルな理由でついていけなかったのかと思っています。
それは、大学の数学と大学の物理が並行して授業が行われるために、数学の知識が追い付いていなかったのだと思います。(正確には物理科で習う数学は「物理数学(物理に必要な数学)」です)
もちろん数学だけ勉強すれば良いということではない
今思えば流体力学がわからないのではなく、数学の知識が足りなかったのだと思い、本記事を書いています。
流体力学に必要な数学のだけ並べてみましたが、もちろん数学だけマスターしても流体力学が理解できるかどうかはわかりません。
しかし、流体力学を学習していく中で必ず数学の知識が必要なのですが、流体力学を勉強しているのに数学でつまずくのはもったいないと思っています。
数学の知識学足りないことがわかったとしても何から手を付けていけば良いのかがわからない場合が多いです。
最低限の数学の知識が身についてくれば、今度こそ流体力学の専門書にチャレンジできるようになるでしょう。
その時には、数学ではつなづくことはなく、今度は物理的な本質でつなづく可能性があります。
またつまづくのかと思うかもしれませんが、むしろ物理的な内容で壁を感じる方が楽しく流体力学を学習することができると思っています。
以前、ダイセルの久保田邦親博士から、インゴットの対流冷却と凝固組織の関係を教えてもらったことがありました。フレッケルの話も面白かったです。