大学数学

ナブラ演算子の基礎を理解する3つのメリット。

こんにちは(@t_kun_kamakiri)(^^)/

ナブラ演算子ってご存じでしょうか?

本記事ではナブラ演算子について必ず理解しておいた方が良い3つのメリットについて解説を行います。

こんな方が対象
  • ナブラ演算子(∇←こいつ)がちょっと苦手な方
  • ∇の計算とその意味を含めて復習したい方

こういった方は、本記事と下記の次回の記事を合わせて読むことで、ナブラ演算子に対する苦手意識は無くなることでしょう!

次回の記事はこちら

※微分、偏微分、全微分が理解していることを前提としています。

本記事の内容は初心者CAEサークルの勉強会で取り扱う内容となっております。

では、具体的にナブラ演算子を理解しておいた方が良い3つのメリットをまとめると以下となります。

ナブラ演算子を理解する3つのメリット
  1. 物理現象を数式で表現できる
  2. 物理現象の理解の助けになる
  3. 表式が簡単になる

カマキリ

では、はじめましょう(^^)/

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物理現象を数式で表現できる

ナブラ演算子に慣れておくと良いメリットの1つ目が物理現象を数式で表現した際に多くの場面で登場することですね。

物理現象を記述する方程式にはナブラ演算子$\nabla$を使った表式がいっぱいあります。ここでは、分野ごとに分けてナブラ演算子$\nabla$が使われる例をいくつか紹介します。

カマキリ

式の意味を理解する必要はありません。こんなにいっぱい使われてるよってことを感じ取ってください

力学

物体に加わる力を$\bm{F}(\bm{r})$、それによるポテンシャルを$U(\bm{r})$とします。$\bm{F}(\bm{r})$が保存力(ポテンシャル力)である場合は、以下のような関係式が成り立ちます。

\begin{align*}
\bm{F}=-\nabla U\tag{1}
\end{align*}

この式が成り立つということは、

\begin{align*}
\nabla\times \bm{F}=0\tag{2}
\end{align*}

が成り立つということと等価です。
これはナブラ演算子を使ったベクトル公式でも有名な$\nabla\times \bm{F}=\nabla\times \big(\nabla U\big)=0$が成り立つからです。

この時点でナブラ演算子を押さえておかないと辛くなってきますね(‘ω’)ノ

電磁気学

電磁気学に至っては基礎式であるマクスウェル方程式は、ほとんどがナブラ演算子で書かれています。

\begin{align*}
\left\{\begin{matrix}
\nabla\cdot \boldsymbol{E}&=&\frac{\rho}{\epsilon_{0}}\\
\nabla \cdot \boldsymbol{B}&=&0\\
\nabla\times \boldsymbol{E}&=&-\frac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t}\\
\nabla\times \boldsymbol{B}&=&\mu_{0}\boldsymbol{j}+\epsilon_{0}\mu_{0}\frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t}
\end{matrix}\right.\tag{3}
\end{align*}

中学生で習った「右ねじの法則」「ファラデーの電磁誘導」などを式で書き下すと上記のような形にまとまるわけですね(^^)

量子力学

量子力学でもナブラ演算子は大活躍ですね。

  • 運動量演算子:$\hat{p}=-i\hbar\hat\nabla$

この運動量演算子により、$\hat{H}\phi(\bm{r})=E\phi(\bm{r})$から以下のようなシュレディンガー方程式(時間依存なし)が導かれます。

\begin{align*}
\bigg(-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+U(\bm{r})\bigg)\phi(\bm{r})=E\phi(\bm{r})\tag{4}
\end{align*}

シュレディンガーに至っては$\nabla^2$のようにナブラ演算子の2乗が含まれていますね。

流体力学

流体力学の全ての基礎式にナブラ演算子が含まれています。

連続の式

\begin{align*}
\frac{\partial \rho}{\partial t}+\nabla\cdot (\rho\bm{v})=0\tag{5}
\end{align*}

運動量保存

\begin{align*}
\frac{\partial \rho \bm{v}}{\partial t}+\nabla\cdot (\rho\bm{v}\bm{v})=\nabla\cdot \bm{\sigma}+\bm{f}\tag{6}
\end{align*}

エネルギー保存則

\begin{align*}
\frac{\partial \rho(e+\frac{\bm{v}\cdot\bm{v}}{2})}{\partial t}+\nabla\cdot \bigg(\rho(e+\frac{\bm{v}\cdot\bm{v}}{2})\bm{v}\bigg)=\nabla\cdot (k\nabla T)+\nabla\cdot(\bm{\sigma\cdot\bm{v}})\tag{7}
\end{align*}

ナブラ演算子が嫌いだと流体力学の式を見るのも嫌になりますよね。

伝熱工学

熱の移動に関しては、エネルギーの移動量は温度差によって生じているとして以下のようなフーリエの法則が成り立ちます。

物質の熱伝導$\lambda$ [W/(m·K)]、温度勾配を$\nabla T$ とすると、熱流束$\bm{q}$ [W/m2]は以下の式で表されます。

フーリエの法則

\begin{align*}
q=-\lambda\nabla T\tag{8}
\end{align*}

これは熱伝導によって生じる熱流束を表した式です。

このように$\nabla$を使った物理現象の基礎式は多く見られます。
物理現象の基礎式自体が「何か物理量の変化量(時間変化だったり、空間変化)」を表した式だからです。

物理現象の理解の助けになる

ナブラ演算子に慣れておくと良いメリットの2つ目が物理現象の理解の助けになることですね。

ナブラ演算子の演算には意味があります。
例えば、

\begin{align*}
\bm{F}=-\nabla U\tag{1}
\end{align*}

を見たときに「あ、この力は保存力だな」と理解できます。

別の例では、

\begin{align*}
\bm{\omega}=\nabla\times \bm{v}=0
\end{align*}

であれば、「あ、渦なし流れだな(‘ω’)ノ」とわかります。

表式が簡単になる

ナブラ演算子に慣れておくと良いメリットの3つ目が表式が簡単になることですね。

例えば以下のナビエストークスを2次元の式で書くと以下のように2つ式を書かなければなりません。

【2次元での計算】
ナビエストークス方程式
\begin{align*}
\frac{\partial u}{\partial t}+u\frac{\partial u}{\partial x}+v\frac{\partial u}{\partial y} = -\frac{1}{\rho}\frac{\partial p}{\partial x}+\nu \left(\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}+\frac{\partial^2 u}{\partial y^2} \right) +F_{x}\tag{9}
\end{align*}
\begin{align*}
\frac{\partial v}{\partial t}+u\frac{\partial v}{\partial x}+v\frac{\partial v}{\partial y} = -\frac{1}{\rho}\frac{\partial p}{\partial y}+\nu\left(\frac{\partial^2 v}{\partial x^2}+\frac{\partial^2 v}{\partial y^2}\right)+F_{y}\tag{10}
\end{align*}
ただ、これをナブラ演算子を使い、速度ベクトルを$\bm{v}$と書くことで1つの式で書くことができます。
ナビエストークス方程式
\begin{align*}
\frac{\partial \boldsymbol{v}}{\partial t}+(\boldsymbol{v}\cdot\nabla)\boldsymbol{v}=-\frac{1}{\rho}\nabla p + \nu \nabla^2\boldsymbol{v}+\boldsymbol{F}\tag{11}
\end{align*}

※ナビエストークス方程式は成分の数の式があります。
※\(\boldsymbol{F}\):外力(定ベクトル)

今回は2次元を例に取りましたが、3次元になるとナブラ演算子を使わない場合は3つ方程式を書く必要があります。しかし、ナブラ演算子を使って書けば2次元の時と同様にスッキリと一つの式(11)で書くことができます

次回の内容

ここまででナブラ演算子について理解しておいた方が良い3つのメリットをまとめました。

ナブラ演算子3つのメリット
  1. 物理現象を数式で表現した際に多くの場面で登場する
  2. 物理現象が理解できる
  3. 表式が簡単になる

理学・工学問わず登場するナブラ演算子については慣れ親しんでおく方が良いですね。

慣れてくればナブラ演算子も踊りだします(‘ω’)ノ

ナビエストークス方程式
\begin{align*}
\frac{\partial \boldsymbol{v}}{\partial t}+(\boldsymbol{v}\cdot\nabla)\boldsymbol{v}=-\frac{1}{\rho}\nabla p + \nu \nabla^2\boldsymbol{v}+\boldsymbol{F}\tag{11}
\end{align*}

では、次回の記事ではナブラ演算子を使った「勾配grad」「発散div」「回転rot」について少々に見ていきます。

次回の記事はこちら

 

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諸学者でも理解できる「ベクトル解析」の書籍としてはマセマの参考書がおすすめです。
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